「新しいホームページを作ったのに、なぜか問い合わせが増えない……」そんな経験はありませんか?デザインは綺麗に仕上がったし、サービスの内容もちゃんと書いてある。なのに、なぜかお客様が問い合わせフォームまでたどり着いてくれない。
「うちのサイト、なんとなく使いにくいのかもしれない」と漠然と感じながらも、何が問題なのか、どこを直せばいいのかがわからない——そんな状況に悩む経営者・担当者の方は、実はとても多いです。
そのモヤモヤの原因のひとつが、「ユーザビリティ」の問題かもしれません。見た目は良くても、訪問者にとって「使いにくい」サイトは、問い合わせに結びつかないのです。
この記事では、ユーザビリティとは何か、なぜ問い合わせ率に影響するのか、そしてどう改善すればよいのかを、専門知識のない方にもわかるようにお伝えします。
ユーザビリティとは何か
ユーザビリティ(usability)とは、一言でいうと「使いやすさ」のことです。Webサイトの文脈でいえば、「訪問者がサイトを迷わず使えるかどうか」を表す概念です。
国際標準化機構(ISO)の定義では、「特定のユーザーが、特定の利用状況において、目標を達成するための有効さ・効率・満足度の程度」とされています。難しく聞こえますが、要は「使いたい人が、やりたいことを、ストレスなくできるか」ということです。
たとえば飲食店のWebサイトを考えてみましょう。来訪者が「場所を確認したい」という目的を持っていたとき、地図やアクセス情報がすぐに見つかれば、ユーザビリティが高い状態です。逆に、何度もメニューをクリックしてやっと見つかる、あるいはそもそも地図がどこにあるかわからない、という状態はユーザビリティが低いといえます。
類似用語・関連用語との違い
ユーザビリティと混同されやすい言葉がいくつかあります。それぞれの違いを整理しておきましょう。
ユーザビリティとUX(ユーザーエクスペリエンス)の違い
UXは「ユーザーがサービス全体を通じて得る体験」のことで、ユーザビリティはその一部です。UXが「体験全体の心地よさ」だとすれば、ユーザビリティは「操作の使いやすさ・わかりやすさ」に焦点を当てた概念です。
たとえば、操作は使いやすくても、サービスの内容に満足できなかったり、購入後のサポートが悪かったりすると、UX全体の評価は下がります。ユーザビリティはUXを構成する重要な要素のひとつ、と理解しておくとよいでしょう。
ユーザビリティとUI(ユーザーインターフェース)の違い
UIはボタン・テキスト・色使い・レイアウトなど、ユーザーが直接触れる「画面の見た目・操作部分」のことです。UIが良くても、ユーザビリティが高いとは限りません。
たとえば、ボタンのデザインがどれだけ美しくても、「押したあとにどこに飛ぶかわからない」という状態ではユーザビリティは低いです。UIは見た目の話、ユーザビリティは「使ってどう感じるか・迷わないか」の話と覚えておきましょう。
ユーザビリティとアクセシビリティの違い
アクセシビリティは「誰でも使えるかどうか」を指します。視覚に障害がある方、高齢の方、デバイスに不慣れな方など、さまざまな状況のユーザーがサイトを利用できるかどうかです。ユーザビリティが「目的のターゲットユーザーが使いやすいか」を問うのに対し、アクセシビリティはより幅広い「誰でも使えるか」を問います。
ユーザビリティが重要な理由
使いにくいサイトは即離脱される時代になった
スマートフォンが当たり前になった今、ユーザーの行動パターンは大きく変わりました。気に入らなければ数秒で他のサイトに移れる時代です。
「3秒ルール」という言葉があります。ページが表示されるまで3秒以上かかると、多くのユーザーが離脱するというものです。これはページ速度の話ですが、「使いにくい」と感じる体験でも同様のことが起きます。目的の情報が見つからない、操作に迷う——そういったストレスが積み重なると、ユーザーはためらいなく「戻る」ボタンを押します。
どれだけ良いサービスをしていても、サイトが使いにくければ、その良さが伝わる前にユーザーは去ってしまいます。
ユーザビリティが低いと問い合わせ率(CVR)が下がる
Webサイトの最終的な目的は「問い合わせ」「資料請求」「購入」などのアクション(コンバージョン)につなげることです。ユーザビリティの低さは、このコンバージョン率(CVR)に直結します。
よくあるのが「問い合わせページまで来ているのに離脱している」というケースです。フォームの入力が面倒、何を書けばいいかわからない、プライバシーポリシーのリンクが見当たらない——こういった小さな「使いにくさ」が、最後の一歩を踏み出させないのです。
ユーザビリティの改善は、集客(アクセス数を増やすこと)ではなく、来てくれた人に「行動してもらう」ための施策です。同じアクセス数でも、CVRが2%から4%に上がれば、問い合わせ数は2倍になります。
Googleも「使いやすいサイト」を評価する
ユーザビリティはSEO(検索エンジン最適化)にも影響します。Googleは「ユーザーにとって価値のあるサイト」を上位に表示する方針を強めており、ページの読み込み速度・スマートフォン対応・操作のしやすさなどが評価基準に含まれています。
具体的には、「Core Web Vitals(コアウェブバイタル)」という指標があり、ページ表示速度・視覚的な安定性・操作への反応速度を測定します。これらのスコアが低いと、検索順位に悪影響が出る可能性があります。
「綺麗なサイトを作れば検索で上位に出る」は誤解です。使いやすいサイトを作ることが、SEOにも問い合わせにも効いてくるのです。
よくある失敗・問題点
多くのサイトで見かける「ユーザビリティの落とし穴」をご紹介します。思い当たるものはないか、自分のサイトと照らし合わせながら読んでみてください。
1. メニュー構成が複雑すぎる
「サービス」「ソリューション」「事例」「会社情報」「ニュース」「ブログ」……ナビゲーションに項目が多すぎると、ユーザーはどこに何があるかを把握できなくなります。
特に危険なのが「専門家目線でメニューを設計している」パターンです。社内では当たり前の分類でも、初めて訪問したユーザーには意味がわからないことがあります。
2. スマートフォンで使いにくい
現在、多くのWebサイトへのアクセスはスマートフォンからです。PCで見たときにきれいに整ったデザインでも、スマホで確認すると文字が小さくて読めない、ボタンが押しにくい、という状態になっていることがあります。
「レスポンシブデザイン対応」とうたっていても、実際に使いやすいかどうかは別の話です。必ず実機で確認することが大切です。
3. ファーストビューで何のサービスか伝わらない
ページを開いた最初の画面(ファーストビュー)を見て、「このサイトが何のためにあるのか」がわからなければ、多くのユーザーはスクロールせずに去ってしまいます。
おしゃれな全画面画像・動画を使ったデザインは印象的ですが、「何のサービスか」「誰のためのサービスか」が伝わらないと、ユーザーは自分に関係があるサイトなのかわからないままです。
4. 問い合わせフォームの入力項目が多い
「名前」「会社名」「電話番号」「メールアドレス」「住所」「問い合わせ種別」「詳細内容」……こんなにたくさん入力するの、と感じたことはありませんか?問い合わせのハードルを下げるのに最も効果的なのが、フォームの入力項目を減らすことです(この施策のことをEFOといいます)。
「必要な情報を全部集めたい」という気持ちはわかりますが、まず問い合わせしてもらうことが優先です。詳細は商談で聞けばいいと割り切り、最初のフォームはシンプルにしましょう。
5. 信頼感を伝える情報が見当たらない
初めて訪問したユーザーは必ず「このサービスは信頼できるのか?」と考えます。会社概要・代表のプロフィール・実績数・お客様の声・導入事例が見当たらないと、ユーザーは不安を感じて離脱します。
「実績はたくさんあるのにサイトに掲載していない」というケースも非常に多いです。サービスの信頼性を伝える情報は、積極的に掲載しましょう。
実施すべき施策・活用方法
ユーザビリティを改善するための具体的な施策をご紹介します。
ヒートマップでユーザーの行動を可視化する
ヒートマップとは、ユーザーがWebサイト上でどこをクリックしたか、どこまでスクロールしたか、どこで止まったかを色の濃淡で可視化するツールです。「なんとなく使いにくそう」という感覚を、データに基づいた課題として把握できるようになります。
たとえば「大事な情報を下に書いていたけど、ほとんどのユーザーがそこまでスクロールしていなかった」ということが可視化されると、情報を上に移すべきか、スクロールを促す工夫が必要かを判断できます。
代表的なツール:Microsoft Clarity(無料)、Hotjar
EFO(フォーム最適化)でコンバージョン率を上げる
EFO(Entry Form Optimization)とは、問い合わせフォームや申し込みフォームを使いやすく最適化する施策です。ユーザビリティ改善の中でも、問い合わせ率への直接効果が最も大きい施策のひとつです。
具体的な改善ポイントは以下のとおりです。
- 入力項目を最小限に絞る(名前・メール・相談内容の3項目が理想)
- エラーメッセージをわかりやすくする(「入力エラー」ではなく「メールアドレスの形式が正しくありません」)
- 確認画面をなくして1ステップで送信できるようにする
- 「送信後にどうなるか」を明示する(「◯営業日以内にご連絡します」など)
- スマートフォンで入力しやすいよう、ボタンを大きくする
ファーストビューを見直す
ページを開いた瞬間に「このサービスは自分に関係ある」と伝わる設計にすることが、離脱率を下げる最重要ポイントです。
ファーストビューに含めるべき情報は次のとおりです。
- 何のサービスか(一言キャッチコピー)
- 誰のためのサービスか(ターゲット)
- 他社との違い(差別化ポイント)
- 次のアクション(CTAボタン)
画像や動画で「雰囲気」を伝えるだけではなく、テキストで明確に伝えることが重要です。
ナビゲーション(メニュー)を整理する
メニュー項目は7つ以内を目安にしましょう。それ以上になる場合は、ユーザーが本当に使うもの・使わないものを整理して絞り込みます。
また、ラベルは「ユーザーの言葉」で書くことが大切です。「ソリューション」より「できること・サービス」、「コーポレート情報」より「会社概要」のほうが、初めて来訪したユーザーには伝わりやすいです。
信頼要素(トラストコンテンツ)を追加する
ユーザーが安心して問い合わせできるよう、以下の要素をサイトに加えましょう。
- 実績数・年数(「創業◯年」「導入実績◯社」)
- お客様の声・事例(写真付きが理想)
- 代表のプロフィール・顔写真
- メディア掲載・受賞歴(あれば)
- SSL証明書(URLがhttpsになっているか)
ページの読み込み速度を改善する
画像の圧縮・不要なプラグインの削除・キャッシュ設定の最適化などで、ページの読み込み速度を改善します。Googleが提供する「PageSpeed Insights」というツールで、自分のサイトのスコアを確認できます(無料)。
スコアが60点未満の場合は、改善の余地が大きいと考えてください。
スマートフォンで実際に操作して確認する
PCで確認するだけでなく、実際にスマートフォンで自社サイトを操作してみましょう。「このボタン、押しにくい」「文字が小さくて読めない」「スクロールしにくい」という感覚は、実機を触らないとわかりません。
Googleのモバイルフレンドリーテスト(無料)でも、スマートフォン対応度を確認できます。
ABテストで改善効果を測定する
ABテストとは、ボタンの色・キャッチコピー・フォームのレイアウトなどを2パターン用意して、どちらがコンバージョン率が高いかを比較する方法です。「なんとなくこっちのほうがいいかな」という感覚ではなく、データに基づいて改善の効果を判断できます。
同時に複数の要素を変えると「どの変更が効いたか」がわからなくなるため、一度に変える要素は1つに絞ることが鉄則です。
実施の4ステップ
ユーザビリティ改善は、闇雲に始めても効果が出にくいです。以下の4つのステップで進めると、効率よく改善できます。
ステップ1:現状を数値で把握する
まずはGoogleアナリティクス(GA4)やSearch Consoleで、現状のデータを確認します。「どのページの離脱率が高いか」「問い合わせフォームへの流入はあるのに送信が少ない」といった課題を、感覚ではなく数字で把握します。
「問い合わせページの離脱率が高い」「ページAで滞在時間が異常に短い」といったデータが、改善の優先順位を決める手がかりになります。
ステップ2:ユーザーの目線で課題を見つける
データで課題のある箇所が見えてきたら、「なぜそこで離脱しているのか」をユーザー目線で考えます。ヒートマップツールを活用すると、ユーザーの行動パターンが可視化されて課題の仮説を立てやすくなります。
また、実際に自分でサイトを使ってみること、知人・スタッフに使ってもらってフィードバックをもらうことも有効です。「作った側」は見慣れているので気づかない問題を、「初めて使う人」は簡単に発見します。
ステップ3:優先順位をつけて改善する
見つかった課題を全部一度に直そうとすると、リソースが分散して効果測定もできなくなります。「影響範囲が大きい課題」から優先的に着手しましょう。
優先度が高いのは以下のような課題です。
– 多くのユーザーが通るページ(トップ・サービスページ・問い合わせページ)
– CVRに直接影響するページ(フォーム・CTAボタン付近)
– 離脱率が特に高いページ
ステップ4:改善→計測→仮説→改善のサイクルを回す
一度改善して終わりではなく、「改善 → データで効果を確認 → 次の仮説を立てる → さらに改善」のサイクルを繰り返すことが重要です。
ユーザビリティは一度完璧にしたらOKではなく、ユーザーの行動・デバイス・競合環境の変化に合わせて継続的に改善していくものです。小さな改善の積み重ねが、大きな成果につながります。
効果測定・ツール紹介
ユーザビリティ改善の効果は、以下のツールで測定できます。
Google Analytics 4(GA4)
Googleが提供するアクセス解析ツール。ページごとの離脱率・滞在時間・コンバージョン数などを無料で確認できます。ユーザーがどのような経路でサイトを回遊しているかを把握するのに最適です。
Google Search Console
サイトへの流入キーワード・検索順位・クリック率を確認できるGoogleの無料ツールです。「どんな言葉で検索してきたユーザーが多いか」を把握することで、ユーザーの意図に合ったコンテンツ設計ができます。
Microsoft Clarity(ヒートマップ)
マイクロソフトが提供する無料のヒートマップ・セッション録画ツールです。ユーザーがどこをクリックしているか、どこでスクロールを止めているかを視覚的に確認できます。無料で使えるため、まず試すならこのツールがおすすめです。
PageSpeed Insights
Googleが提供するページ速度計測ツール(無料)。PCとスマートフォンそれぞれの速度スコアと、改善すべき具体的な項目を表示してくれます。URLを入力するだけで診断できるため、まず自社サイトのスコアを確認してみましょう。
Googleモバイルフレンドリーテスト
自社サイトがスマートフォンに対応しているかどうかを確認できるGoogleの無料ツールです。対応できていない具体的な問題点も表示されます。
成功事例
事例1:問い合わせフォームを改善して送信率が2倍になったBtoB企業
製造業向けのBtoB企業。アクセス数は月1,000件以上あるのに、問い合わせは月3〜4件しか来ていませんでした。
ヒートマップで確認したところ、問い合わせページには到達しているユーザーが多いものの、フォームを入力し始めても途中で離脱するケースが続出していました。原因は「入力項目が多すぎること」と「エラーメッセージがわかりにくいこと」でした。
入力項目を11項目から4項目(会社名・氏名・メール・相談内容)に絞り、エラーメッセージを具体的な表現に変更したところ、フォーム送信率が改善し、問い合わせ数が倍増しました。
事例2:ファーストビューを変えて直帰率が改善したサービス業
士業(行政書士・社労士)の事務所。サイトを開いても何のサービスかよくわからない全画面写真がファーストビューに使われており、直帰率(1ページだけ見て離脱する率)が高い状態でした。
ファーストビューに「◯◯でお困りの中小企業の経営者様へ」「創業◯年・◯社の支援実績」というコピーと問い合わせボタンを追加したところ、直帰率が改善し、問い合わせ数も増加しました。
事例3:スマホ対応を改善してモバイルからの問い合わせが増加したEC
アパレルEC。デザイナーが作ったPC用デザインをそのままスマートフォンに適用していたため、スマホ表示でボタンが小さすぎて押せない状態でした。
スマートフォン専用のレイアウトを設計し直し、ボタンのサイズ・間隔を改善したところ、スマホからの購入率が改善しました。スマートフォンでの体験改善は、BtoC・BtoB問わず効果が出やすい施策です。
始める前に確認しておくこと
ユーザビリティ改善を依頼・実施する前に、以下の点を確認しておくと進めやすくなります。
現在のアクセス状況を把握しているか
Google Analytics(GA4)が設置されていない、あるいはデータを見ていない場合は、まず計測環境を整えることが最優先です。データがなければ「改善できているのかどうか」が判断できません。
誰がサイトを使う想定か(ペルソナ)が明確か
「誰にとって使いやすいか」は、ターゲットユーザーによって変わります。高齢者向けのサービスと、IT系スタートアップ向けのサービスでは、使いやすさの基準が異なります。誰のためのサイトかを明確にしてから改善に着手しましょう。
現状の問い合わせ数・CVRを把握しているか
改善前の基準値がないと、改善後に「どれだけ良くなったか」が測れません。「月◯件の問い合わせ」「CVR◯%」という現状の数字を把握してから始めましょう。
改善作業の権限・体制があるか
Web制作会社に外注している場合、サイトの修正には費用・時間がかかることがあります。どこを誰がいつ修正するかを明確にしておくと、改善サイクルをスムーズに回せます。
ユーザビリティは、「デザインを綺麗にする」こととは別の話です。見た目が良くても使いにくいサイトは問い合わせにつながらず、シンプルでも「使いやすい」サイトはしっかり成果が出ます。まずは自分のスマートフォンで自社サイトを開いて、「迷わず問い合わせページにたどり着けるか」を確認してみてください。そこから見える課題が、改善の第一歩です。
関連用語
- UX(ユーザーエクスペリエンス) — ユーザーがサービス全体を通じて得る体験の総体。ユーザビリティはUXを構成する重要な要素のひとつ
- UI(ユーザーインターフェース) — ボタン・レイアウト・色使いなど、ユーザーが直接触れる操作画面のこと
- CVR(コンバージョン率) — サイト訪問者のうち問い合わせ・購入などのアクションを起こした割合。ユーザビリティ改善で直接向上できる指標
- ヒートマップ — ユーザーがどこをクリック・スクロールしているかを視覚化するツール。ユーザビリティの課題発見に活用する
- ABテスト — 2パターンのデザインや文章を比較して、どちらがコンバージョン率が高いかをデータで検証する手法
- EFO(エントリーフォーム最適化) — 問い合わせ・申し込みフォームを使いやすく改善してコンバージョン率を高める施策