SaaSビジネスや投資家向けの説明で頻繁に登場する指標に、ARRがあります。「ARR〇億円突破」というニュース記事を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
ARRは、Annual Recurring Revenueの略で、日本語では「年次経常収益」と訳されます。毎年安定的に得られるサブスクリプション収益の年間合計額を示す指標で、事業規模や成長率を外部に説明する際の共通言語として使われます。
ARRの計算方法
ARRの基本的な計算式は非常にシンプルです。
ARR = MRR(月次経常収益) × 12
たとえば、月額10万円のサービスを50社が契約していれば、MRRは500万円、ARRはその12倍の6,000万円となります。
年払い契約が中心のビジネスであれば、年間契約額をそのまま積み上げてARRを算出するケースもあります。どちらの方法で算出しているかは、社内・投資家向けの説明資料で明記しておくと誤解を防げます。
MRRとの違いと使い分け
ARRとセットでよく使われる指標にMRR(月次経常収益)があります。両者は「月単位で見るか、年単位で見るか」という粒度の違いだけで、算出の元になるデータは同じです。
- MRR:直近の月次トレンドを追うのに向いている。施策の効果測定やチャーン(解約)の早期発見に活用
- ARR:年間ベースの事業規模を示すのに向いている。資金調達・経営会議・年度計画など、長期的な視点での意思決定に活用
日々の運用ではMRRを追いかけ、四半期や年度の節目でARRに換算して経営層や投資家に報告する、という使い分けが一般的です。
ARRが重視される理由
ARRが重視されるのは、単月の売上だけでは見えにくい「事業の継続的な稼ぐ力」を示せるからです。
特にスタートアップの資金調達の場面では、投資家がARRの成長率(前年比・前期比)を重視します。「ARRが1年で2倍になった」といった伸び率は、事業の将来性を判断する重要な材料になります。
また、ARRは以下のような場面でも活用されます。
- M&A・企業評価の際の売上規模の目安
- 年間予算・採用計画の策定
- SaaS企業のIR資料・プレスリリースでの実績公表
ARRを見る際の注意点
ARRは便利な指標ですが、いくつか注意すべき点があります。
単月の実績を単純に12倍しない
好調だった1ヶ月のMRRだけを12倍してARRとして報告すると、実態より過大な数字になってしまいます。直近の安定したMRRをベースに算出することが大切です。
一時的な収益は含めない
単発のオプション購入やスポット契約による収益は「経常収益」ではないため、ARRには含めません。あくまで継続が見込める収益のみを対象とします。
解約率とセットで見る
ARRが伸びていても、解約率(チャーンレート)が高ければ将来的な収益は不安定です。新規獲得と解約防止の両面から数字を確認しましょう。
まとめ
ARR(年次経常収益)は、MRRを年単位に換算した指標で、事業の継続的な収益力を投資家や経営層に説明する際の基本指標です。日常の運用ではMRRで細かくトレンドを追い、節目のタイミングでARRに換算して報告する、という使い分けを意識してみてください。
関連用語
- MRR(月次経常収益) — ARRを月単位に換算した指標。日々の運用でのトレンド把握に使う
- チャーンレート(解約率) — 収益の継続性を測るために欠かせない指標
- LTV(顧客生涯価値) — 顧客一人あたりが生涯にもたらす収益の合計
- KPI — 事業目標の達成度を測る重要業績評価指標