フレームワークとは?Web制作で使われる開発基盤の種類と発注時の知識

「このサイト、どこで作ったんですか?」「WordPressです」「あ、じゃあ保守も簡単そうですね」——そんな会話が実は少し噛み合っていない、と感じたことはありませんか? WordPressを使っていても、その上にどんな「骨格」が乗っているかによって、費用も保守のしやすさも大きく変わってきます。その「骨格」のことをフレームワークと呼びます。

「フレームワークって、システム開発の話でしょ?うちには関係ないかな」と思った方こそ、少しだけ読み進めてみてください。制作費の見積もりに数十万円の差が出たとき、その理由の多くはフレームワークの選択に関係しています。知識ゼロで発注すると、後から「なぜこんなにかかるの?」「なぜ修正が大変なの?」と戸惑うことになりがちです。

この記事では、フレームワークとは何か・なぜ費用や保守に影響するのか・発注時に何を確認すればよいかを、専門知識なしで読めるようにわかりやすく解説します。

フレームワークとは何か

フレームワーク(framework)とは、直訳すると「枠組み」や「骨格」という意味です。Web制作・システム開発の世界では、「よく使う機能をまとめた開発の土台」のことを指します。

たとえば家を建てるとき、柱・梁・基礎をゼロから設計するのは大変です。でも「プレハブ住宅のような標準的な骨格」があれば、そこに必要な部屋を加えていくだけで効率よく家が建てられます。フレームワークはまさにこの「標準的な骨格」のようなものです。

Webサービスやシステムを作るとき、どんな案件でも共通して必要になる処理があります。たとえば——

  • ユーザーのログイン・認証処理
  • データベースとのやり取り
  • URLと画面の紐付け(ルーティング)
  • 不正なデータの検証(バリデーション)

こうした「毎回必ず作るもの」を、あらかじめ用意しておいたのがフレームワークです。開発者はゼロから書かなくてよい分、ビジネスロジック(そのサービス固有の機能)の開発に集中できます。

類似用語・関連用語との違い

フレームワークと混同しやすい用語を3つ整理します。

ライブラリとの違い

ライブラリも「よく使う機能の集まり」ですが、使い方のニュアンスが異なります。ライブラリは「必要なときに呼び出す道具箱」で、開発者がいつ・どこで使うかを自由に決められます。一方フレームワークは「決まった使い方・お作法がある骨格」で、そのルールに沿って開発を進める必要があります。よく使われる例として、jQueryはJavaScriptのライブラリ、LaravelはPHPのフレームワークです。

CMSとの違い

CMS(コンテンツ管理システム)は、非エンジニアでも記事や画像をWebサイトに追加・編集できる仕組みです。WordPressが代表例です。CMSはフレームワークの上に作られたアプリケーションの一種で、「管理画面を通して誰でも更新できる」ことに特化しています。フレームワークは開発者向けの土台、CMSはその上に乗る完成品のイメージです。

プログラミング言語との違い

プログラミング言語(PHP・Python・JavaScriptなど)は、コンピュータに命令を書くための「言語」そのものです。フレームワークはその言語を使って書かれた「ツールキット」です。たとえばPHP(言語)の上にLaravel(フレームワーク)が乗っている、という関係になります。

フレームワークが重要な理由

開発コストと品質に直結する

フレームワークを使うと、共通処理の実装をゼロから書く手間が省けます。ログイン機能ひとつとっても、ゼロから安全に作ると数日かかる作業が、フレームワークを使えば数時間で実装できます。

逆に言えば、フレームワークを使わない開発(フルスクラッチ開発)は自由度が高い反面、コストも工数も大きくなります。見積もりで「フルスクラッチでの開発費用」が高くなる理由のひとつがここにあります。

保守・運用のしやすさを決める

フレームワークには「決まったお作法(コーディング規約)」があります。そのお作法に沿って作られたシステムは、別のエンジニアが見ても「ここを直せばいい」とわかりやすくなります。

お作法が統一されていないシステム(独自の書き方だらけのもの)は、最初に作ったエンジニア以外には読み解けず、保守が難しくなります。制作会社を変えたときに「前の会社が作ったシステムは読めないので、一から作り直しになります」と言われた経験がある方もいるかもしれません。フレームワークの有無と種類は、こうした「属人化リスク」に直接関わっています。

セキュリティの土台を担う

現代のフレームワークには、代表的なセキュリティ対策が組み込まれています。SQLインジェクション(データベースへの不正な操作)やXSS(クロスサイトスクリプティング)といった攻撃への防御が、フレームワーク自体に備わっているためです。

ゼロから書く場合、セキュリティ対策のすべてを開発者が実装しなければならず、見落としのリスクが高まります。フレームワークを使うことで、このリスクを大幅に下げられます。

よくある失敗・問題点

「何を使って作ったか」を確認しなかった

発注時に「普通のWebサイトを作ってください」とだけ伝えると、使用するフレームワークや技術スタックは制作会社の判断に委ねられます。完成後に「この技術は5年後にサポートが終わる予定です」と知らされても後の祭りです。発注前に「どんな技術で作りますか?」と確認するだけで、こうしたリスクを事前に共有できます。

マニアックな技術で作られて保守できる業者がいない

珍しいフレームワークや独自フレームワークで作られると、対応できるエンジニアが限られます。制作会社が廃業・担当者が離職した際に、他の会社に引き継げないという事態が起こります。「有名なフレームワークで作られているか」は保守性の重要な指標です。

フレームワークのバージョンが古くて更新できない

フレームワークはソフトウェアの一種なので、定期的にバージョンアップされます。古いバージョンを使い続けると、セキュリティの脆弱性が修正されないリスクが生じます。しかし途中でバージョンアップすると動作が変わる場合もあるため、更新コストが発生します。「バージョンアップに対応しているか」を運用計画に含めておくことが大切です。

「とりあえずWordPress」が合わない用途に使われた

WordPressは世界で最も使われているCMSですが、すべての用途に最適なわけではありません。大量のデータを扱う業務システムや、高度なカスタマイズが必要なWebアプリには、WordPressより専用のフレームワークが向いています。「使い慣れているから」という理由だけで選ばれると、後から「この機能はWordPressでは難しい」という壁に当たることがあります。

フロントエンドとバックエンドでバラバラな技術が使われた

大型のWebサービス開発では、フロントエンドとバックエンドに別々のフレームワークを使う場合があります。この組み合わせが一般的なものであればよいのですが、組み合わせによっては連携が複雑になり、保守コストが上がる場合があります。担当者が変わったときに「この構成は引き継ぎにくい」と言われるリスクがある組み合わせは避けるのが賢明です。

実施すべき施策・活用方法

目的に合ったフレームワークを選ぶ

フレームワークは「何を作りたいか」によって最適な選択肢が変わります。情報発信が中心のコーポレートサイトならWordPress(正確にはWordPressを動かすPHP基盤)、会員機能・複雑な業務ロジックが必要なシステムならLaravelやDjango、スマートフォンアプリのような高速な操作感が必要なWebサービスならReactやVue.jsといったJavaScriptフレームワークが選ばれます。

まず「このサイト・システムで何をしたいか」を整理してから、技術選定の話を制作会社にしてもらうのが理想的です。

保守可能な「メジャーなフレームワーク」を選ぶ

初めて発注する方はとくに、「世界で広く使われているフレームワーク」を選ぶことをおすすめします。利用者が多いフレームワークは、対応できるエンジニアが多く、情報も豊富で、長期的なサポートが期待できます。代表的なものとしては次のようなものがあります。

  • WordPress(PHP): 世界のWebサイトの40%以上で使われているCMS基盤
  • Laravel(PHP): PHPの代表的フレームワーク。中小規模の業務システムに多用
  • React(JavaScript): Facebook(Meta)が開発。Webアプリのフロントエンドで最も普及
  • Vue.js(JavaScript): 学習しやすく、国内でも広く使われるフロントエンドフレームワーク
  • Django(Python): セキュリティが強固で、データ処理系のWebサービスに向く

フレームワークとバージョンを文書で残してもらう

制作完了時に「どのフレームワークの何バージョンを使ったか」を文書化して受け取っておくと、将来の保守・引き継ぎがスムーズになります。これは「技術仕様書」や「システム構成書」と呼ばれることが多いものです。「納品物に仕様書を含めてください」と事前に合意しておきましょう。

保守・アップデートの計画を最初に立てる

フレームワークには「サポート期限」があります。WordPressも定期的にバージョンアップされ、古いバージョンへのセキュリティサポートはやがて終わります。制作後の保守体制——「誰がどんな頻度でバージョンアップを担当するか」——を最初に決めておくことで、予期せぬ障害を防げます。

制作会社の「得意な技術スタック」を事前に確認する

制作会社にはそれぞれ得意な技術があります。PHPが得意な会社、JavaScriptフレームワークが得意な会社、WordPress専門の会社……選択肢はさまざまです。「御社が主に使うフレームワークは何ですか?」と聞くだけで、その会社の技術的な特性がわかります。得意でない技術で無理に作ると、品質・スピード・費用の面でリスクが生じます。

バックエンドとフロントエンドの分担を確認する

近年のWebサービスでは、「バックエンド(データ処理)」と「フロントエンド(画面表示)」が別のフレームワークで構成されるケースが増えています。この「分離型アーキテクチャ(ヘッドレス構成とも呼ばれる)」は高い自由度を持つ一方、開発コストも上がります。「この構成で作る必要があるか」を制作会社に確認し、オーバースペックな提案になっていないかチェックしましょう。

実施の3〜4ステップ

フレームワーク選定・発注を適切に進めるための手順を整理します。

ステップ1:作りたいものの要件を整理する

「何のためのサイト・システムか」「どんな機能が必要か」「将来的に追加したい機能は何か」を文書にまとめます。機能の全体像が見えることで、適切なフレームワーク選定の判断ができるようになります。この整理は発注者側でできる作業です。

ステップ2:制作会社に技術方針を確認する

提案・見積もりをもらう際に「どのフレームワークを使いますか?その理由は?」と質問します。「なぜそれを選ぶか」を説明できない会社は、技術選定が習慣や惰性になっている可能性があります。理由を説明してくれる会社は信頼できます。

ステップ3:長期的な保守体制を合意する

制作後の保守(バージョンアップ・セキュリティ対応・機能改修)を誰が担当するかを決めます。同じ制作会社に保守も依頼するのか、自社で管理するのか、別の保守会社に引き継ぐのかによって、フレームワークの選択基準も変わります。

ステップ4:納品物に仕様書を含める

完成したシステムの「使っている技術・バージョン・構成」を記した仕様書を必ず受け取ります。将来、別の会社に保守を引き継ぐ際や、システムを改修する際の重要な資料になります。

効果測定・ツール紹介

フレームワークの選定が適切かどうかは、以下の観点で評価できます。

ページ表示速度の測定(Google PageSpeed Insights)
フレームワークと実装の組み合わせによって、サイトの表示速度が大きく変わります。Googleが提供する無料ツール「PageSpeed Insights」でサイトのURLを入力すると、表示速度スコアと改善提案が得られます。スコアが低い場合、フレームワークの設定最適化で改善できることがあります。

セキュリティ診断(Sucuri SiteCheck など)
外部のセキュリティ診断ツールを使うと、サイトに既知の脆弱性がないかを簡易チェックできます。WordPressサイトなら「Sucuri SiteCheck」や「WPScan」が代表的です。

フレームワークのバージョン確認
制作会社から受け取った仕様書や、システムの設定ファイルで使用バージョンを確認できます。各フレームワークの公式サイトには「サポート終了スケジュール」が記載されているため、いつまで安全に使えるかを把握しておきましょう。

成功事例

事例1:WordPressからLaravelへの移行で保守コストを削減

あるBtoB企業が、もともとカスタマイズしすぎたWordPressで構築していたサービスを、Laravel(PHPフレームワーク)にて再構築した事例です。WordPressのバージョンアップのたびにプラグインが壊れ、都度対応コストが発生していたのを解消するのが目的でした。

Laravel移行後は「やりたいことを直接実装できる」ため余計なプラグイン管理が不要になり、月次の保守コストが大幅に下がりました。「WordPressで無理をしていた」と気づいたのは、移行後だったというのがこの事例の教訓です。

事例2:React導入でユーザー体験を改善し離脱率が低下

サービス申し込みフォームを従来の「ページ遷移型」から、ReactによるSPA(シングルページアプリケーション)に変更した事例です。SPAとは、ページを丸ごと読み込み直すのではなく、必要な部分だけをすばやく更新する仕組みです。

画面遷移のたびに待ち時間が発生していた以前の状態から、ストレスなく入力を進められるUIに改善されました。結果として申し込みフォームの途中離脱率が改善しています。フレームワークの変更が直接ビジネス成果につながった好例です。

事例3:「WordPress一択」をやめて用途に合った構成に

コーポレートサイト(情報発信)とシステム(業務管理)を同じWordPressで無理やり一本化していた中小企業が、フロントのWordPressと業務バックエンドのLaravelを分離した事例です。

「WordPressでシステムを作ると処理が遅い・プラグインが干渉する・セキュリティリスクが高まる」という問題があったため、情報発信はWordPressのまま、業務システムだけLaravelで再構築しました。目的に合った技術を選ぶことで、それぞれの保守コストが下がり管理もシンプルになりました。

始める前に確認しておくこと

発注を検討する前に、以下の点を整理しておくとスムーズです。

何をしたいか(要件の明確化)
「どんな機能が必要か」「更新を自分でやりたいか、プロに任せたいか」「将来的な機能拡張の予定はあるか」——これらが固まっていると、制作会社から的確な提案を引き出せます。

予算と運用コストの全体像
初期制作費だけでなく、月次の保守費用・年次のバージョンアップ費用も含めた「5年間のトータルコスト」で考えるのが理想です。フレームワークの選択によってこのコストは大きく変わります。

制作会社の技術力の確認方法
「過去に同じフレームワークで作った実績はありますか?」「その案件の保守も担当していますか?」と聞くのが有効です。実績のある会社は具体的に答えられます。

引き継ぎ・乗り換えを前提に考える
「もしこの制作会社とのお付き合いが終わったら、次の会社でも引き継げるか?」を考えておくことが重要です。メジャーなフレームワーク・ドキュメント化された仕様書・ソースコードのバージョン管理(Gitなど)があれば、乗り換えリスクを下げられます。


フレームワークは、Webサイトやシステムの「見えない骨格」です。費用の高低・保守のしやすさ・将来の拡張性——そのすべてに影響を与えます。「どのフレームワークを使うか」を発注前に一言確認するだけで、トラブルを未然に防ぐことができます。専門知識がなくても「なぜその技術を選ぶのか」を説明してもらえば、信頼できる制作会社かどうかを見極めるヒントになります。

関連用語

  • CMS — フレームワークの上に作られたコンテンツ管理ツール。WordPressが代表例
  • フロントエンド — フレームワークを使って画面(見た目)を実装する領域
  • バックエンド — フレームワークを使ってデータ処理・ビジネスロジックを実装する領域
  • WordPress — PHPベースのCMS。フレームワーク上に構築された最も普及したWebサイト基盤
  • JavaScript — ReactやVue.jsなどフロントエンドフレームワークの土台となるプログラミング言語

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