ファネルとは
「ファネル(funnel)」は日本語で「漏斗(じょうご)」を意味する言葉です。
マーケティングでは、見込み客が商品・サービスを「知る」ところから「購入する」ところまでの流れを段階的に整理したモデルのことを指します。上から下へ流れる漏斗の形のように、最初は多くの人がいても段階を経るごとに人数が絞られていく様子が、そのまま図の形になっています。
たとえば、1,000人がウェブ広告を見て認知しても、実際に問い合わせるのは100人、商談まで進むのは30人、最終的に契約するのは10人、というイメージです。このような「絞り込まれる構造」をファネルと呼んでいます。
ファネルを使って何がわかるのか
ファネルを整理すると、「どの段階でお客さまが離れているか」が一目でわかるようになります。
例えば、ウェブサイトへのアクセスは多いのに問い合わせが少ない場合、認知から興味・検討に移るところで離脱が起きている可能性があります。一方、問い合わせは来ているのに成約につながらない場合は、商談フェーズに課題があると考えられます。
このように、どこがボトルネックになっているかを特定することで、改善すべきポイントが明確になります。「なんとなく全体を良くしよう」ではなく、「この段階だけに集中して手を打つ」という発想ができるようになります。
ファネルの基本構造
ファネルは、一般的に以下の4段階で整理されることが多いです。
認知
商品やサービスの存在を知る段階です。広告・SEO・SNS・口コミなど、さまざまな接点が「入口」になります。この段階では、まだ「興味がある」わけではなく、「なんとなく見かけた」程度のことも含まれます。
興味・関心
認知した上で「もう少し知りたい」と思う段階です。ウェブサイトを調べたり、ブログ記事を読んだり、SNSをフォローしたりするような行動が該当します。
比較・検討
複数の選択肢を比べながら「どこに頼もうか」と具体的に考え始める段階です。見積もりを取る、競合他社と比較する、口コミを調べるといった行動が起きます。ここは特にBtoB(企業向けビジネス)で時間がかかりやすいフェーズです。
購入・行動
最終的に申し込みや購入・契約が完了する段階です。ここまで来た人が「成果(コンバージョン)」としてカウントされます。
ファネルの3つの種類
マーケティングでよく使われるファネルには、主に3つの種類があります。
パーチェスファネル
「購入前」の段階を整理したもっともオーソドックスなファネルです。上述の「認知→興味→検討→購入」という流れがこれにあたります。新規顧客の獲得を目的とした施策を考える際に使われます。
マーケティングの世界では昔から「AIDMA(アイドマ)」という消費者行動モデルが知られていますが、パーチェスファネルはこのAIDMAの考え方をベースにしています。認知(Attention)→興味(Interest)→欲求(Desire)→記憶(Memory)→行動(Action)という流れを段階として可視化したものです。
インフルエンスファネル
「購入後」の段階を整理したファネルです。購入したお客さまが、リピートするか・友人に紹介するか・SNSで発信するか、という視点で整理します。ファンを育てる(ファン化・ロイヤルカスタマー化)ための施策を検討するときに使われます。
特にSNSが普及した現代では、一人の顧客が口コミや投稿を通じて多くの人に影響を与えることがあるため、購入後の体験もマーケティングの重要なテーマになっています。
ダブルファネル
パーチェスファネルとインフルエンスファネルを組み合わせた、より包括的なモデルです。認知から購入までの「新規獲得」の流れと、購入後のファン化・紹介・発信という「継続・拡散」の流れを一体で見ることができます。
顧客全体のライフサイクルを俯瞰して戦略を考えたいときに役立ちます。
カスタマージャーニーとの違い
似た概念として「カスタマージャーニー」がありますが、使い方が少し異なります。
カスタマージャーニーは、ひとりの顧客が「どんな気持ちで・どんな行動をとり・どこでブランドと接点を持ったか」を時系列で地図のように描いたものです。顧客の感情・行動・タッチポイントを詳細にマッピングするため、粒度が細かく、定性的な側面も含みます。
一方、ファネルは段階ごとの「人数の多さ」や「離脱率」など、定量的な視点で全体を把握するためのモデルです。どちらが優れているということではなく、「全体の流れと課題箇所を把握したいときはファネル」「一人の顧客体験を深掘りしたいときはカスタマージャーニー」と使い分けられることが多いです。
ファネルは「古い」って本当?
ファネルという概念は数十年前から使われているため、「もう時代遅れでは?」という声を聞くことがあります。この問いに対しては、「使い方次第」というのが正直なところです。
BtoCのEC(通販)や消費財のように、顧客が短時間で複数の情報源を行き来しながら購入を決めるケースでは、一方向に流れるファネルモデルが実態に合わないことがあります。たとえば、SNSで偶然目にした投稿でいきなり購入を決める、という動線はファネルの段階をほぼスキップしています。
一方、BtoB(企業向けビジネス)では今もファネルは非常に有効です。稟議・比較検討・複数回の商談など、意思決定に時間とステップがかかるため、「今どの段階にいる案件か」「どこで止まっているか」を管理する枠組みとしてファネルが機能します。
完璧なモデルはありませんが、シンプルな構造で「全体を俯瞰し、課題箇所を特定する」という使い方は、今も十分通用します。
ファネル分析の進め方
ファネルを実際に活用するには、まず自社のファネルを言語化することからはじめられるとベストです。
Step 1 自社のファネルを書き出す
「うちのお客さまはどうやって自社を知り、どのプロセスを経て購入するか」を紙に書いてみます。最初は大まかでも構いません。例えばBtoBの場合、「広告クリック → ウェブサイト訪問 → 資料ダウンロード → 問い合わせ → 商談 → 契約」のような流れになるかもしれません。
Step 2 各段階の数値を把握する
書き出した各ステップに、実際の数値を当てはめます。「先月の広告クリック数は何件か」「そのうちウェブサイトから問い合わせが来たのは何件か」「商談から成約になった割合は何%か」といった具合です。
GA4(Googleアナリティクス)やCRMツール、広告管理画面などのデータを使うと、各ステップの数値が確認できます。
Step 3 ボトルネックを特定する
数値を並べると、特定のステップで大きく数が減っている箇所が見えてきます。そこが「今もっとも改善インパクトの大きいポイント」です。
ウェブサイトの直帰率が高いのであれば、ページの内容や表示速度に課題があるかもしれません。問い合わせ後の成約率が低いのであれば、商談の進め方やクロージングの改善が効果的かもしれません。
Step 4 改善策を一点に絞って実施する
ボトルネックが特定できたら、まずその一点に集中して改善します。いくつもの施策を同時に行うと、どれが効いたかわからなくなるため、優先度を決めて順番に実施できるとベストです。
BtoBビジネスでのファネル活用例
Web制作・Webマーケティングを外注している中小企業の場合、発注プロセスのファネルは概ね以下のようになります。
「検索で会社を知る(認知)→ ウェブサイト・実績を確認(興味)→ 複数社に問い合わせ・見積もり比較(検討)→ 最終的に1社に絞って発注(購入)」
この流れを意識すると、「認知段階ではどんなコンテンツが有効か」「比較検討段階では何が決め手になるか」という具体的な施策の方向性が見えてきます。
例えば、検討段階で離脱が多い場合は、実績事例の充実や見積もり依頼のしやすさ、担当者の顔が見えるようにすることが効果的なことがあります。発注者視点で「この段階では何を知りたいか・何が不安か」を考えることが、施策の精度を上げるポイントです。
ファネルを活用する際の注意点
ファネルはあくまで「考える枠組み」であり、現実を100%再現するモデルではありません。
顧客は必ずしも決まった順番でフェーズを進むわけではありませんし、一度購入してくれた顧客が再び検討フェーズに戻ることもあります。「このお客さまは今どの段階にいるか」という仮説をもとに施策を考えるツールとして使うのが、現実的な付き合い方です。
また、ファネルを整理しただけでは何も変わりません。大切なのは「どの段階に課題があるかを把握し、具体的な改善行動につなげる」ことです。分析で終わらず、次のアクションに落とし込む使い方を心がけられるとよいでしょう。
関連用語
- カスタマージャーニー — 一人の顧客の行動・感情・接点を時系列で整理したマップ
- コンバージョン(CV) — ファネルの最下部にあたる「問い合わせ・購入が完了した」状態
- リード — ファネルの上部にいる「まだ購入前の見込み客」
- ナーチャリング — ファネルの途中にいる見込み客の購買意欲を育てる活動
- CRM — ファネル管理に欠かせない顧客情報・商談状況を一元管理するツール