「うちのホームページ、なんでもっと問い合わせが来ないんだろう」と思ったことはありませんか?
サイトをリニューアルしたのに反応がない、広告を出してもすぐ離脱される、コンテンツを更新しても成果につながらない……こうした悩みの多くは、お客さまがどんな道のりで「買う」という決断に至るかを整理できていないことから起きています。
そこで役立つのが「カスタマージャーニー」という考え方です。難しそうな名前に聞こえますが、要は「お客さまの気持ちと行動を時系列で追いかける地図を作る」ということ。この地図を持つだけで、「どこで情報発信すべきか」「どんな言葉を使えば刺さるか」が格段に見えやすくなります。
カスタマージャーニーとは何か
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを知ってから、購入・継続に至るまでの行動と心理の流れを整理した概念です。日本語に訳すと「顧客の旅」。顧客が商品と出会い、興味を持ち、比べて、決断して、使い続けるまでの一連の体験を「旅」に見立てています。
カスタマージャーニーマップとの違い
「カスタマージャーニー」と「カスタマージャーニーマップ」はよく混同されますが、少し意味が異なります。
- カスタマージャーニー: 顧客の旅そのもの(概念)
- カスタマージャーニーマップ: その旅を図や表に視覚化したもの
実際の現場では両方の意味で使われることも多く、「カスタマージャーニーを作る」と言えばマップの作成を指すのが一般的です。
マップは通常、横軸に時系列のフェーズ(認知→興味→比較検討→購入→継続など)、縦軸に顧客の行動・感情・タッチポイントなどを配置した表形式で作られます。
顧客行動フレームワークの変化
カスタマージャーニーの考え方は、消費者行動モデルの変化とともに進化してきました。
AIDMAからAISASへ
インターネット普及前は「AIDMA」というモデルが主流でした。
- Attention(認知)→ Interest(興味)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)
しかしインターネットが普及すると、人々は「欲しいな」と思ったらすぐに検索してレビューを調べ、比較してから買うようになりました。そこで登場したのが「AISAS」です。
- Attention(認知)→ Interest(興味)→ Search(検索)→ Action(行動)→ Share(共有)
さらにSNSが当たり前になった現代では、フィリップ・コトラーが提唱する「5A」という考え方も注目されています。
- Aware(認知)→ Appeal(訴求)→ Ask(調査)→ Act(行動)→ Advocate(推奨)
「購入して終わり」ではなく、購入後に口コミやSNS投稿でまわりに広めてもらうところまでが顧客の旅として捉えられるようになっています。
カスタマージャーニーが必要な理由
なぜカスタマージャーニーを整理する必要があるのでしょうか。大きな理由は2つあります。
顧客の行動が複雑になっているから
以前は「テレビCM→店頭で購入」のようなシンプルな流れでした。しかし今は、SNSで知ってGoogleで調べてYouTubeで口コミを見て比較サイトで確認して……という複雑な経路をたどります。しかも一度離れてまた戻ってくることも珍しくありません。
この複雑な動きを把握せずに「とりあえず広告を出す」「とりあえずSNSを更新する」をやっても、顧客の旅のどの場所にも刺さらない施策になってしまいます。
社内の認識がバラバラになりやすいから
マーケティング担当と営業担当と経営者では、「お客さまはどんな流れで問い合わせてくるのか」という認識が違うことが多いです。カスタマージャーニーマップを一枚の図にすることで、全員が同じ顧客像を見ながら議論できるようになります。
カスタマージャーニーを整理するメリット
顧客視点で施策を考えられる
「会社がやりたいこと」ではなく「顧客が何を求めているか」を起点に施策を設計できます。認知段階ではまだ商品を押し売りしてもうまくいかない、検討段階では比較情報が求められている、といったフェーズごとに適切なアプローチが見えてきます。
施策のKPIが明確になる
「なんとなくアクセスを増やしたい」ではなく、「認知フェーズでは月間リーチ〇万人」「検討フェーズではページ滞在時間〇分以上」といった形で、フェーズごとの成果指標が設定しやすくなります。
社内・外注先との認識が統一できる
Web制作会社・広告代理店・コンテンツ制作担当など、複数の関係者が動くプロジェクトでは「誰向けのどのフェーズ向けの施策か」を共通認識にすることが重要です。カスタマージャーニーマップがあれば、外注先への説明コストも大幅に下がります。
ブランドの一貫性が保てる
顧客は複数の接点(SNS・検索・ランディングページ・担当者からのメールなど)を通じて会社に接します。それぞれの接点でバラバラなメッセージを出していると信頼を損ないます。カスタマージャーニーを整理することで、どの接点でも一貫したブランドイメージを伝えられるようになります。
BtoCとBtoBでの考え方の違い
BtoCの場合
消費者向けビジネスでは、意思決定者は基本的に1人です。感情や衝動が購買に影響しやすく、SNSやロコミが大きな役割を果たします。フェーズの移動も比較的スピーディーです。
BtoBの場合
法人向けビジネスでは、意思決定に複数の関係者が関わります。担当者が良いと思っても、上長の承認が必要だったり、別部署の合意が必要だったりします。
そのため、BtoBのカスタマージャーニーでは「担当者」「決裁者」「影響者」それぞれの行動・感情を分けて整理することが重要です。「担当者は興味を持っているのに、決裁者の承認がなかなか取れない」という課題も、マップ上で可視化すると対策が立てやすくなります。
カスタマージャーニーマップの作り方
ステップ1: ペルソナを設定する
まず「誰のカスタマージャーニーを描くか」を決めます。ここがあいまいだとマップが広すぎて使いにくくなります。年齢・職業・課題・情報収集の方法などを具体化したペルソナを1〜2人設定できるとベストです。
「担当者Aさん:45歳・中小企業の総務兼マーケ担当・GoogleとYouTubeで情報収集する・SNSは見るが投稿しない」といったレベルで具体化すると、施策の方向性が揃いやすくなります。
ステップ2: フェーズ(横軸)を定める
次に、顧客が辿る段階を時系列で整理します。一般的には以下のような6段階が使われますが、自社のビジネスに合わせてカスタマイズして構いません。
- 認知: 商品・サービスの存在を知る
- 興味・関心: 詳しく知りたいと思う
- 比較・検討: 他社と比べる・条件を確認する
- 購入・申込: 契約・購入を決断する
- 利用: 実際にサービスを使う
- 継続・推奨: リピートする・人に紹介する
フェーズを作りすぎると管理が複雑になるため、最初は4〜6段階に絞るのが現実的です。
ステップ3: 各フェーズの行動・思考・感情を書き出す
横軸にフェーズを置いたら、縦軸に以下の項目を埋めていきます。
行動
顧客がそのフェーズで実際に何をしているか。「Googleで検索する」「InstagramでDMを送る」「比較サイトを見る」など。
思考・疑問
顧客がそのとき何を考えているか。「本当に効果があるの?」「他社と何が違うの?」「費用はどのくらいかかる?」など。
感情
顧客がどんな気持ちでいるか。不安・期待・迷い・焦り・安心感など。感情の起伏を「感情曲線」として折れ線グラフで表現する方法もあります。
タッチポイント
そのフェーズで顧客と接触する場所・手段。Webサイト・SNS・営業担当・展示会・口コミサイト・メールマガジンなど。
ステップ4: タッチポイントでの課題と施策を整理する
各タッチポイントで「今、顧客はどんな障壁を感じているか?」を洗い出し、それを解消するための施策を考えます。
たとえば「比較・検討フェーズ」で「費用感がわからなくて不安」という感情があるなら、「料金のよくある質問ページを充実させる」「事例紹介ページで予算感を開示する」といった施策が見えてきます。
ステップ5: 定期的に更新する
一度作って終わりではなく、顧客の声・データをもとに継続的に更新することが重要です。世の中の情報収集行動は変化し続けるため、半年〜1年に一度は見直せるとベストです。
「カスタマージャーニーは古い」と言われる理由と実際のところ
「カスタマージャーニーはもう時代遅れ」という意見を目にすることがあります。これには、顧客の行動が「一本道」ではなく「らせん状」や「ループ状」になっているという背景があります。
確かに現代の購買プロセスは複雑で、マップで表現しきれない部分も多くあります。しかし「顧客の行動と感情を可視化して、チーム全体で共通認識を持つ」というカスタマージャーニーの本質的な価値は変わっていません。
大切なのは「完璧なマップを作ること」ではなく、「顧客を起点に考える習慣を組織に根付かせること」です。シンプルな形からで十分。まずは主要なフェーズと、顧客がどこで何を感じているかを書き出すところから始めてみることをおすすめします。
カスタマージャーニー作成でよくある失敗
作って満足してしまう
最もよくある失敗が「マップを作ること自体が目的になってしまう」パターンです。大切なのはマップを作った後に「では次の施策は何か」を実行すること。作成した後の活用計画もセットで考えられるとベストです。
作り手の思い込みで埋めてしまう
「お客さまはこう感じているはずだ」という想像だけでマップを埋めると、実態とズレたものができてしまいます。アンケート・インタビュー・アクセスデータなどの実際のデータや顧客の声をもとに作ることが精度向上につながります。
複雑にしすぎて使われなくなる
すべての項目を網羅しようとすると、マップが複雑になりすぎて「見るのが面倒」になってしまいます。まずは行動・感情・タッチポイントの3点だけに絞るシンプルな形で始めるのが継続のコツです。
1回作って更新しない
顧客の行動パターンや市場環境は変化します。一度作ったマップをずっと使い続けると、実態とかけ離れた「古い地図」になってしまいます。
まとめ
カスタマージャーニーは、顧客が商品を知ってから購入・継続するまでの行動と心理の流れを可視化する考え方です。これを整理することで、「どのフェーズで何をすべきか」が明確になり、施策に一貫性が生まれます。
完璧なものを最初から作る必要はありません。「誰のどんな旅を描くか」を決めて、主要なフェーズに沿って顧客の行動と感情を書き出すところから始めてみてください。そのシンプルな一枚が、チーム全体の顧客理解を大きく変えることがあります。
当社でもWebサイトのリニューアルや集客改善のご提案をする際には、まずクライアントの顧客がどんな旅をしているかを一緒に整理するところから始めています。まだカスタマージャーニーを整理できていない方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
関連用語
- ペルソナ:カスタマージャーニーを描く前提となる、ターゲット顧客を具体的な人物像として設定すること
- ファネル:認知から購買へと絞り込まれていく顧客の流れを漏斗に例えた概念
- ナーチャリング:見込み客の購買意欲を育てていく取り組み。カスタマージャーニーの中間フェーズで重要な役割を果たす
- コンテンツマーケティング:記事・動画などを発信して自然に見込み客を集めるマーケティング手法
- KPI:目標達成に向けた途中経過を測る指標。フェーズごとのKPI設計にカスタマージャーニーが役立つ