「さっき見ていた商品の広告が、別のサイトを見ているときにも出てきた」という経験はありませんか?あれがリターゲティング広告です。なんとなく「追いかけられている感じ」がして少し不思議に思った方も多いかもしれません。この記事では、リターゲティング広告の仕組みや種類、メリット・デメリット、実際の使い方まで、発注者として知っておきたいことをまとめてお伝えします。
リターゲティング広告とは
リターゲティング広告とは、一度自社のウェブサイトを訪問したことがあるユーザーに対して、サイト外でも広告を表示し続ける手法です。
たとえば、あるオフィス家具のECサイトで椅子を見たけれど、その場では購入せずに別のページへ移動した。すると数日後、ニュースサイトやYouTubeを見ているときに、さっきの椅子の広告が表示される——。これがリターゲティング広告の典型的なシナリオです。
「また出てきた」と感じるほど印象に残りやすいため、一般的なディスプレイ広告よりもコンバージョン率(CVR)が高くなる傾向があり、費用対効果の面で優れた手法として多くの企業に活用されています。
リマーケティング広告との違い
リターゲティング広告と同じ意味でよく使われる言葉に「リマーケティング広告」があります。機能的にはほぼ同じものですが、呼び方の違いは広告媒体による違いです。
- リターゲティング広告:Yahoo!広告や一般的な業界用語での呼び名
- リマーケティング広告:Google広告での呼び名
どちらを使っても通じますが、Google広告の管理画面ではリマーケティングという言葉が使われているため、支援会社のレポートで「リマーケティング」と書かれていても同じ意味だと理解しておきましょう。
リターゲティング広告の仕組み
リターゲティング広告がどのように動いているかを知っておくと、外注先への質問や運用状況の確認がしやすくなります。
Cookieの役割
リターゲティング広告の仕組みの中心にあるのが、Cookie(クッキー)と呼ばれる技術です。
Cookieとは、ウェブサイトを訪問したときにブラウザ(ChromeやSafariなど)に保存される小さなデータのことです。「このユーザーは〇〇のページを見た」という情報をCookieとして記録しておくことで、そのユーザーが別のサイトを閲覧しているときに広告を表示できる仕組みになっています。
配信までの流れ
リターゲティング広告が表示されるまでのおおまかな流れは以下のとおりです。
ステップ1:タグをサイトに設置する
まず、広告媒体(Google広告やYahoo!広告など)から発行される「リターゲティングタグ」(トラッキングコードとも呼ばれます)を自社のウェブサイトに埋め込みます。このタグは、サイトに来たユーザーのブラウザにCookieを発行するための仕組みです。
ステップ2:訪問者リストを作る
タグを設置すると、サイトに来たユーザーが自動的に「リターゲティングリスト」に蓄積されていきます。このリストはセグメント(条件別のグループ)に分けて管理でき、たとえば「商品ページを見た人」「カートに入れたけど購入しなかった人」「特定のページを3回以上見た人」など、細かく絞り込むことができます。
ステップ3:広告配信システムと連携する
作成したリストを広告キャンペーンに紐付けると、リストに含まれるユーザーが別のウェブサイトやアプリを閲覧しているタイミングで広告が自動表示されます。広告の表示先は、GoogleやYahoo!が提携しているウェブサイト・アプリ・YouTube・Gmailなど、非常に広い範囲に及びます。
ピクセルベースとリストベースの2種類
技術的な観点では、リターゲティング広告は大きく2種類に分けられます。
上で説明したCookieを使う方法は「ピクセルベース」と呼ばれ、サイト訪問者に対してリアルタイムで広告を配信できるのが特徴です。最も一般的な手法です。
もう一つは「リストベース」と呼ばれる方法で、自社で保有しているメールアドレスリストを広告媒体にアップロードし、リスト上のユーザーに広告を配信します。既存顧客へのアップセルや、休眠顧客の呼び戻しに有効です。
リターゲティング広告の種類
リターゲティング広告にはさまざまな種類があります。目的に応じて使い分けられるとベストです。
サイトリターゲティング
最もスタンダードなタイプです。自社サイトを訪問したユーザーに対して、バナー広告やテキスト広告を配信します。「まだ検討中かもしれない人」への再アプローチとして幅広く使われています。
動的リターゲティング(ダイナミックリマーケティング)
ECサイトや不動産・旅行サービスなどで特に効果的なタイプです。ユーザーが閲覧した商品やページの情報をもとに、広告の内容が自動的に変わります。「あなたが見ていたあの商品」をピンポイントで表示できるため、関連性が高く購買につながりやすい傾向があります。
検索広告向けリターゲティング(RLSA)
Google広告の機能で、サイト訪問者がGoogleで関連キーワードを再び検索したときに、入札額を上げて広告を優先表示させる手法です。すでにサイトを知っているユーザーに対して検索広告を強化できます。
動画リターゲティング
YouTubeを活用したリターゲティングです。サイト訪問者がYouTubeを見ているときに動画広告を表示します。視覚的・感情的に訴求できるため、商品の魅力やブランドイメージを伝えるのに向いています。
アプリリターゲティング
スマートフォンアプリのユーザーを対象としたリターゲティングです。アプリをインストールしたが使わなくなったユーザーや、購入直前で離脱したユーザーへの再アプローチに使います。
リターゲティング広告のメリット
見込み度の高いユーザーに届けられる
一度サイトを訪れたユーザーは、まったく知らないユーザーと比べてすでに興味や関心が生まれた状態です。そのため、一般的なディスプレイ広告に比べてクリック率(CTR)やコンバージョン率(CVR)が高くなりやすい傾向があります。
ブランドを「思い出してもらう」効果がある
商材によっては、サイトを訪れた当日ではなく、数日・数週間後に購入を決める方も多くいます。その検討期間中に繰り返し広告を見せることで、「また見かけた」という安心感やブランドへの親近感が生まれ、競合よりも優先して選ばれやすくなります。
コスト効率が良い
リターゲティング広告は、不特定多数に広告を配信するのではなく「すでに興味を持っている人」だけに絞って配信できます。そのため、新規ユーザーへの広告よりも無駄打ちが少なく、CPA(1件の成果あたりの広告費)を抑えやすい傾向があります。
セグメントを細かく設定できる
「特定の商品ページを見た人」「カートに入れたが購入しなかった人」「過去30日以内に訪問した人」など、条件を絞り込んだリストを作ることで、ユーザーの状況に合わせたメッセージを届けられます。
リターゲティング広告のデメリットと注意点
過剰配信でマイナスイメージになる恐れがある
リターゲティング広告で最も注意が必要なのは、同じユーザーに何度も同じ広告を表示してしまうことです。1日に何度も同じ広告が出てきたら、ユーザーに「しつこい」「不快だ」という印象を与えかねません。
この問題を防ぐための機能がフリークエンシーキャップです。1ユーザーに1日あたり何回まで広告を表示するかの上限を設定できるため、運用の際には必ず設定できるとベストです。
新規顧客の獲得には向いていない
リターゲティング広告は、一度サイトを訪れたことがある人にしか配信できません。そのため、まだ自社を知らない新規顧客の獲得には効果が出にくい手法です。新規ユーザーの獲得には、リスティング広告やSNS広告、SEOなど別の施策を組み合わせる必要があります。
リストの蓄積に時間がかかる
リターゲティング広告は、ある程度の数のユーザーがリストに溜まらないと広告配信が始まりません。サイトのアクセス数が少ない場合、配信開始までに時間がかかることがあります。月間の訪問者数が数百人規模のサイトでは、最初から大きな成果を期待するのは難しいかもしれません。
Cookie規制の影響がある
近年、プライバシー保護への意識の高まりから、ブラウザのCookieを制限する動きが進んでいます。Safariでは第三者Cookie(サードパーティCookie)がすでに制限されており、Chromeも段階的な対応が続いています。
この影響で、従来のリターゲティング広告の精度が落ちる場面が出てきています。対策として、ファーストパーティデータ(自社で収集した顧客情報)の活用や、コンテクスチュアルターゲティング(ページの内容に連動した広告配信)などへの移行が業界全体で検討されています。
リターゲティング広告が向いている商材・サービス
リターゲティング広告が特に効果を発揮しやすい商材・サービスには共通した特徴があります。
高額・比較検討に時間がかかる商材
不動産・注文住宅・BtoBシステム・高額な教育サービスなどは、購入前に複数社を比較検討し、数週間から数ヶ月かけて決断するケースが多いです。こうした検討期間の長い商材では、繰り返し広告で接触することが選ばれる確率を高める効果があります。
ECサイト・通販
商品の購入ページまで来たのに購入せずに離脱してしまった「カゴ落ち」ユーザーへの再アプローチが代表的な活用例です。動的リターゲティングを使えば、ユーザーが実際に見ていた商品をそのまま広告に表示できるため、購買につながりやすくなります。
旅行・宿泊・イベント
旅行先や宿泊施設を探している段階では、複数のサービスを比べながら決めることが多いです。一度検索・閲覧した後も迷っているユーザーに対して広告を出し続けることで、予約完了まで後押しができます。
美容・健康・エステ
申し込みに踏み切れていない見込み客に対して、「初回無料キャンペーン」「今月末まで割引」などのオファーを組み合わせた広告で背中を押す使い方が効果的です。
リターゲティング広告を始めるための手順
外注先に任せる場合でも、おおまかな流れを把握しておくと、進捗確認や質問がしやすくなります。
広告媒体を選ぶ
まず、どの媒体を使うかを決めます。主な選択肢は以下のとおりです。
Google広告(GDN)
Googleが提携する数百万のウェブサイト・アプリ・YouTube・Gmailに配信できます。リーチが非常に広く、多くの業種で使われています。Google広告ではリターゲティングを「リマーケティング」と呼んでいます。
Yahoo!広告(YDA)
Yahoo! JAPANやその提携メディアに配信できます。年齢層高めの国内ユーザーへのリーチに強みがあります。
Meta広告(Facebook・Instagram)
FacebookやInstagramのフィード・ストーリーズ・リールなどに配信します。視覚的に訴求したい商材や、若い世代へのリーチに向いています。
LINE広告
LINE内やLINE提携メディアへの配信が可能です。幅広い年齢層のユーザーにアプローチでき、国内の月間ユーザー数は9,500万人を超えています。
タグを設置する
選んだ媒体の管理画面でリターゲティングタグ(トラッキングコード)を発行し、自社サイトの全ページに設置します。Googleタグマネージャーを導入していれば、タグの設置・管理がまとめてできて便利です。
リストを作成する
タグの設置後、訪問したユーザーがリストに蓄積され始めます。「サイト全体の訪問者」「特定の商品ページを見た人」「購入完了した人(除外用)」など、目的に合わせてリストを作成します。
購入や問い合わせを完了したユーザーをリストから除外する設定も忘れずに行えるとベストです。すでに成果が出た人に広告を出し続けるのは費用の無駄になります。
広告を設定・配信する
リストとキャンペーンを紐付け、クリエイティブ(バナー画像や広告文)を設定して配信開始です。フリークエンシーキャップの設定も合わせて確認しましょう。
課金方式について
リターゲティング広告の課金方式は主に2種類あります。
クリック課金(CPC)
広告がクリックされたときだけ費用が発生する方式です。クリックされなければ費用はかかりません。サイトへの流入を増やしたい場合に向いています。
インプレッション課金(CPM)
広告が1,000回表示されるごとに費用が発生する方式です。クリックされなくても費用がかかりますが、ブランドの認知や想起を目的とした配信に向いています。
どちらが適しているかは目的や媒体によって異なるため、支援会社に確認しながら設定できるとベストです。
効果的な運用のポイント
セグメントを分けて広告内容を変える
「商品ページを見た人」と「料金ページまで見た人」では、購入への距離感が異なります。それぞれに合わせたメッセージを届けることで、よりコンバージョンに近づきやすくなります。
配信期間を設定する
訪問から時間が経ちすぎたユーザーへの配信は効果が薄れることがあります。一般的には訪問から30〜90日程度を配信期間の目安として設定するケースが多いです。商材の検討期間に合わせて調整できるとベストです。
クリエイティブを定期的に変える
同じデザインの広告を長期間出し続けると、ユーザーが見慣れてしまいクリック率が下がる「広告疲れ」が起きやすくなります。複数のバナーを用意してA/Bテストを行いながら、定期的にクリエイティブを更新できると理想的です。
成果が出たユーザーは除外する
問い合わせや購入を完了したユーザーに対して広告を出し続けるのは、費用の無駄になるだけでなく、ユーザーにとっても不快感につながることがあります。コンバージョンユーザーはリストから除外する設定を忘れずに行えるとベストです。
まとめ
リターゲティング広告は、一度サイトを訪れた見込み客への再アプローチを通じて、コンバージョン率を高めることができる手法です。発注者として押さえておきたいポイントをまとめます。
- 「一度来たことがある人」だけに広告を表示する仕組み
- CookieとタグをSITEに設置することで機能する
- メリットは「見込み度の高い層へのアプローチ」「ブランド想起」「コスト効率」
- デメリットは「新規顧客獲得には不向き」「過剰配信のリスク」
- 向いているのは高額・比較検討が必要な商材やECサイト
- Google広告・Yahoo!広告・Meta広告・LINE広告が主な媒体
外注先からリターゲティング広告の提案を受けたとき、「どんな条件でリストを作っているか」「フリークエンシーキャップは設定しているか」「コンバージョン後のユーザーは除外しているか」という3点を確認できると、運用の質を把握しやすくなります。
関連用語
- ディスプレイ広告:リターゲティング広告の配信先となるウェブサイト上のバナー・画像広告の形式
- リスティング広告:検索結果に表示される有料広告。リターゲティングと組み合わせると効果的
- CVR:コンバージョン率。リターゲティング広告の効果を測る重要な指標
- CPA:1件の成果に対してかかる広告費。リターゲティングの費用対効果を測る
- LP(ランディングページ):リターゲティング広告のリンク先となる、コンバージョンに特化したページ