広告を出しているのに成果が出ているのかよくわからない、という声をよくお聞きします。その原因のひとつが「どの広告が本当に役に立っているのかを正しく測れていない」ことです。
アトリビューションとは、1件の問い合わせや購入に複数の広告が関わっていた場合に、どの広告にどれだけ成果を割り当てるかを考える仕組みのことです。一見難しそうな言葉ですが、この考え方を知っておくだけで、広告費の使い方や効果の見方がぐっと変わります。
この記事では、マーケティングや広告の専門知識がない方に向けて、アトリビューションの意味・なぜ重要なのか・代表的なモデルの違い・どう活用すればよいかを、できるだけわかりやすくお伝えします。
アトリビューションとは
アトリビューション(attribution)は英語で「帰属」や「貢献の割り当て」を意味する言葉です。
Webマーケティングの文脈では、「ユーザーが問い合わせや購入などのゴール(コンバージョン)に至るまでに接触した複数の広告・チャネルに対して、それぞれがどれだけ成果に貢献したかを数値で評価する考え方」のことを指します。
具体例で理解するアトリビューション
たとえば、ある中小企業の担当者が「会計ソフトを探そう」と思い立ったとします。
- Googleで「会計ソフト おすすめ」と検索 → リスティング広告をクリック → 資料ページを見たが、その日は申し込まなかった
- 数日後、ニュースサイトを読んでいたらディスプレイ広告が目に入り、もう一度サイトへ
- さらに翌日、再びGoogleで「〇〇(製品名)」と指名検索 → ランディングページから申し込み
この場合、最終的に申し込みにつながったのは「3回目のリスティング広告」ですが、最初のリスティング広告・ディスプレイ広告がなければ、そもそも申し込みが生まれなかった可能性があります。
このように「複数の接触点(タッチポイント)がどう成果に貢献したか」を整理する考え方がアトリビューションです。
ラストクリックだけでは正しい評価ができない理由
アトリビューションを知らないうちは、多くの場合「最後にクリックされた広告が全成果を生み出した」と評価しがちです。これを「ラストクリックモデル」といいます。
ラストクリックモデルは理解しやすく、Google広告やYahoo!広告のデフォルト設定にもなっているため広く使われています。
ただし、これだけで判断するとある問題が起きます。
途中で貢献した広告が「0点」になってしまう
先ほどの例で言えば、最初のリスティング広告もディスプレイ広告も、ラストクリックモデルでは「貢献度:ゼロ」と評価されてしまいます。
その結果、「この広告は全然コンバージョンが取れていない」と判断して予算を削ってしまうと、実は見込み客の入口として機能していた広告がなくなり、全体の成果が下がってしまうことがあります。
検討期間が長い商品ほどギャップが大きい
BtoB(企業間取引)やリフォーム・医療・士業など、検討期間が1週間〜数ヶ月かかる商品・サービスの場合、購入に至るまでに多くの広告・コンテンツに触れることになります。このような領域ほど、ラストクリックだけでの評価は実態とかけ離れやすくなります。
アトリビューションモデルの種類
アトリビューションモデルとは、複数の接触点に対してどのように貢献度を割り振るかのルールのことです。代表的なものを5つご紹介します。
ラストクリックモデル
最後にクリックされた接点に100%の成果を割り当てる方法です。
もっともシンプルで理解しやすく、広告管理ツールのデフォルト設定になっていることが多いです。「直前に何が効いたか」を見たい場合や、分析を始めたばかりの段階では使いやすいモデルです。
ただし、最初の接触や途中の接触の貢献が完全に無視されるため、認知段階の広告が過小評価されやすい点に注意が必要です。
ファーストクリックモデル
最初にクリックされた接点に100%の成果を割り当てる方法です。
「どの広告が新規ユーザーの入口になっているか」を測るのに向いています。新しい認知を広げたい時期・新商品を出した直後など、流入経路の起点を大切にしたい場合に有効です。
線形モデル
コンバージョンに至るまでのすべての接触点に対して、均等に成果を割り振る方法です。
「特定の接点だけを優遇したくない」「全体的にどのチャネルが機能しているか見たい」という場合に参考になります。ただし、実態として貢献度は接触タイミングや内容によって異なるため、均一評価には一定の限界があります。
減衰モデル(タイムディケイ)
コンバージョンに近い時間帯の接触ほど高く評価し、遠い接触ほど評価を下げる方法です。
「直前に影響した広告が最も重要」という考え方に基づいており、検討期間が比較的短い商品や、リピート購入促進を目的とした広告に向いています。
接点ベースモデル(U字モデル・ポジションベース)
最初の接触と最後の接触にそれぞれ40%を割り当て、残りの20%を途中の接触点で均等に分け合うモデルです。
「どうやって知ってもらったか(入口)」と「最終的に何がきっかけで決断したか(出口)」を両方重視したい場合に適しています。入口と出口のどちらも大切にするバランス型のモデルといえます。
データドリブン(機械学習)モデル
過去のコンバージョンデータをもとに、機械学習によって各接触点の貢献度を自動的に計算するモデルです。Google広告など一部のプラットフォームで利用できます。
データ量が十分にある場合には最も実態に近い評価ができますが、一定のコンバージョン件数(Google広告の場合は月間約50件以上)が必要です。データが少ないうちは利用できません。
アトリビューション分析が向いているケース・向いていないケース
アトリビューションはどんな場合にも有効なわけではありません。自社の状況に合わせて判断することが大切です。
向いているケース
検討期間が長く、複数の接触を経て購入に至ることが多い商品やサービスに特に効果的です。
- BtoB商材(システム・コンサルティング・Web制作など)
- 不動産・リフォーム・医療・士業など高単価サービス
- 複数の広告チャネル(リスティング・ディスプレイ・SNS広告など)を並行して運用している場合
複数の広告を出しているのに「どれが効いているかわからない」という状況がある場合は、アトリビューション分析を導入してみる価値があります。
向いていないケース
一方、検討期間が非常に短い商品や、主な購入経路がほぼ1種類に限られているケースでは、分析の手間に見合う効果が出にくい場合があります。
- 衝動買いが多い低価格の日用品・消耗品
- 広告チャネルが1種類だけ(たとえばリスティング広告のみ)
- コンバージョン件数が非常に少ない(月10件未満など)場合
コンバージョン数が少ないと、分析に十分なデータが集まらず、判断の信頼性が下がります。まずはコンバージョン数を増やすことを優先するとよいでしょう。
アトリビューション分析の具体的なやり方
アトリビューション分析を始めるにあたって、特別に高額なツールが必要なわけではありません。GA4(Googleアナリティクス4)を使えば、一定の分析は無料で行えます。
GA4でアトリビューションを確認する
GA4には「コンバージョン経路レポート」という機能があり、コンバージョンに至るまでにどのようなチャネルをたどったかを確認できます。
確認手順のイメージは以下のとおりです。
- GA4にログインする
- 左メニューから「広告」→「アトリビューション」を開く
- 「コンバージョン経路」を確認する
ここでは「起点」「途中」「終点」に分けて各チャネルがどれだけコンバージョンに貢献したかを見ることができます。
GA4ではデフォルトで「データドリブンモデル」が採用されています。比較したい場合は、異なるモデルを選んで数字の変化を見てみることができるとベストです。
分析の3ステップ
アトリビューション分析を実際の改善につなげるには、以下の流れで取り組むことをお勧めします。
Step 1 まず仮説を立てる
「どの広告が認知の入口になっているか」「どの広告がクロージングに貢献しているか」といった仮説を最初に持っておくと、データを見たときに判断しやすくなります。
Step 2 データを収集・比較する
複数のアトリビューションモデルで同じ期間のデータを比較してみます。ラストクリックと線形モデルで評価が大きく変わる広告があれば、その広告が「途中で貢献している」可能性があります。
Step 3 予算配分を見直す
分析結果をもとに「ラストクリックでは0点に見えていたが、実は入口として機能していた広告」を評価し直し、予算配分の見直しに活かします。一度変えたら終わりではなく、PDCAサイクルで継続的に改善していくことが大切です。
予算配分の最適化にアトリビューションを活かす
アトリビューション分析の最大の目的は、広告費を正しく振り分けることです。
たとえば、ラストクリックモデルだけで見ていると「成果ゼロ」に見えていたディスプレイ広告が、アトリビューション分析をしてみると「認知段階でユーザーの入口になっていた」とわかることがあります。
このような広告を誤って削減してしまうと、新規ユーザーの流入が減り、最終的なコンバージョン数が落ちてしまうことがあります。
反対に、「ラストクリックでは成果が多く見えている広告」でも、実はそれ以前の広告の恩恵を受けているだけで、単体では機能していないケースもあります。
複数のモデルで見比べながら「どの広告が本当に成果に貢献しているか」を正しく把握することが、限られた予算を効率よく使う近道です。
アトリビューション分析で気をつけたいこと
便利なアトリビューション分析ですが、いくつか注意しておきたい点もあります。
どのモデルも「完璧な答え」ではない
アトリビューションモデルはあくまで「貢献度の見方(視点)」のひとつです。同じデータでもモデルを変えれば評価が変わります。「このモデルが絶対に正しい」というものはなく、自社の目的・商品特性・成長段階に合わせて選ぶことが大切です。
オフラインの接触は計測できない
Web広告や検索はデータとして計測できますが、展示会・口コミ・チラシなどオフラインでの接触はGA4などのツールでは追えません。Web上のデータだけで「全体像を把握できた」と思い込まないように注意が必要です。
データが少ないと判断が難しくなる
コンバージョン数が月10〜20件程度の場合、分析結果がブレやすくなります。まずはコンバージョン数を増やすことを優先し、データが蓄積されてきた段階でアトリビューション分析を始めるとよいでしょう。
まとめ
アトリビューションとは、複数の広告接点それぞれがコンバージョンにどれだけ貢献したかを評価する考え方です。
ラストクリックだけで判断していると、実は成果を下支えしていた広告を見落とし、予算を誤った方向に使ってしまうリスクがあります。
まずはGA4のアトリビューションレポートを一度確認してみることをお勧めします。「成果ゼロだと思っていた広告が、実は流入の入口だった」という発見が見つかることもあります。
広告費の効果をより正確に把握したい、予算配分を見直したいというご相談があれば、お気軽に当社にご相談ください。
関連用語
- CV(コンバージョン) — サイトの目的(問い合わせ・購入・資料請求など)をユーザーが完了してくれるアクション
- リスティング広告 — 検索キーワードに連動して表示される有料広告。購買意欲の高い層に届けやすい
- ディスプレイ広告 — ウェブサイトやアプリに表示される画像・動画形式の広告
- GA4 — Googleが無料提供するアクセス解析ツール。コンバージョン経路の確認にも使える
- ROAS — 広告費に対して得られた売上の倍率。アトリビューション分析と組み合わせると精度が上がる