ユーザーシナリオとは?意味・構成要素・作り方をわかりやすく解説

ユーザーシナリオとは

ユーザーシナリオとは、サイトを訪れるユーザーが「どんな状況で・何を目的に・どんな行動をたどるか」を物語のように描き出したものです。

たとえば「営業担当の鈴木さん(32歳)は、顧客へのプレゼン資料を探しているときにスマホで検索し、トップページからサービス紹介ページへ移動して、最終的に問い合わせフォームを送信した」——こういった一連の流れを文章や図表で整理したものがユーザーシナリオです。

Webサイトの設計・リニューアル・改善をおこなう際、「誰がどう使うか」を具体的に描いておくと、コンテンツの順番やボタンの配置など、多くの判断がスムーズになります。Web担当者や制作会社が設計の方向性を揃えるためによく使われる手法で、UX(ユーザー体験)の質を高める土台となります。


ユーザーシナリオを構成する4つの要素

ユーザーシナリオは、基本的に次の4つの要素で成り立っています。

ペルソナ(誰が)

まず「誰がサイトを使うのか」を具体化します。年齢・職業・役職・悩みなどをまとめた架空の人物像(ペルソナ)を設定し、その人物を主人公に据えてシナリオを描きます。

「発注を検討している中小企業の経営者」といった漠然とした像ではなく、「製造業を営む50代の社長で、Webに不慣れだが採用強化のためにリニューアルを検討している」という具体性がポイントです。

スタート地点(どこから来たか)

ユーザーがサイトに辿り着く出発点を明確にします。Google検索からなのか、SNSの投稿を見てなのか、知人の紹介からなのか——スタート地点によって、ユーザーが持っている情報量や期待値が大きく変わります。

ゴール(何を達成したいか)

ユーザーが最終的に何をしたいのかを定義します。「問い合わせフォームを送る」「電話をかける」「資料をダウンロードする」など、サイトとして達成してほしいアクションがゴールになります。

プロセス(どんな行動をたどるか)

スタートからゴールまでの道筋を、行動・思考・感情ごとに書き出します。「トップページを見る→サービス一覧を開く→料金ページが見当たらなくて迷う→問い合わせを断念して離脱する」といった形で可視化することで、どこに課題があるかが見えてきます。


ユーザーシナリオを作るメリット

「そんな手間のかかることをしなくても、感覚でわかるのでは?」と思うかもしれません。ただ、実際にユーザーシナリオを作った方からは「思っていたのと全然違った」という声をよく聞きます。ここでは、作成することで得られる主なメリットをご紹介します。

ユーザー体験をスタートからゴールまで可視化できる

サイト運営者は、つい「自分の会社の視点」でページを見てしまいます。でもユーザーは初めてそのサイトを訪れた状態で、慣れない操作で情報を探しています。シナリオとして書き出すことで、「ユーザーはここで迷うんだ」「このボタンが見つかりにくいんだ」という気づきが生まれやすくなります。

潜在ニーズを掘り起こせる

ユーザーが実際に感じている不安や疑問は、表面的な「問い合わせ数を増やしたい」とは別のところにある場合があります。シナリオを丁寧に描くことで、「この人は料金が不安なんじゃないか」「実績の数よりも担当者の顔が見たいんじゃないか」といった潜在的なニーズに気づけることがあります。

改善すべき箇所が明確になる

問題点が「なんとなくCV(コンバージョン)が少ない」という状態だと、何から手をつけるかわからなくなります。ユーザーシナリオで「プロセスのどの段階で離脱しているか」を可視化できると、「まずここを直す」という優先順位がつけやすくなります。

制作会社・チーム内での認識を揃えられる

Webサイトの制作・改善は、通常、複数の関係者が関わります。シナリオという「共通言語」があると、「このページの目的は何か」「このボタンはどのユーザーに向けたものか」という議論がしやすくなります。認識のズレによる手戻りも減らせるとよいです。


似た用語との違い

ユーザーシナリオと混同されやすい言葉がいくつかあります。それぞれの違いを整理しておきましょう。

カスタマージャーニーマップとの違い

カスタマージャーニーマップは、ユーザーが商品・サービスを「知ってから購入・継続するまで」の長い旅路を地図のように可視化したものです。認知・検討・購入・継続といった複数のフェーズにわたる行動や感情を俯瞰的に整理します。

一方、ユーザーシナリオは「Webサイト内での行動の流れ」に絞って描くことが多く、より具体的・短期的な視点で書かれる傾向があります。

両方を使い分けながら設計に活用するケースも多く、ユーザーシナリオはカスタマージャーニーマップの一部分を詳細化したものと考えると分かりやすいです。

ユーザーストーリーとの違い

ユーザーストーリーは、主にシステム開発・アジャイル開発の現場で使われる手法です。「〇〇というユーザーとして、△△できる機能がほしい。なぜなら□□だから」という定型フォーマットで要件を整理します。

ユーザーシナリオが「体験の流れを描く」のに対して、ユーザーストーリーは「機能の要件を定義する」ことが目的です。Web制作やマーケティングの現場では、ユーザーシナリオのほうが一般的に使われます。

ユースケースとの違い

ユースケースは、システムやサービスが「どのような操作・入力に対して何を返すか」を機能単位で定義するものです。エンジニアや設計者が要件定義に使うことが多く、ユーザーの感情や思考は扱いません。

ユーザーシナリオが「人の体験」を描くのに対して、ユースケースは「システムの動作」を定義するイメージです。


ユーザーシナリオの作り方(ステップ別)

実際にユーザーシナリオを作る手順を、ステップ別にご説明します。

Step 1. ゴールと目的を明確にする

まず「このシナリオを作る目的は何か」を整理します。新規サイト制作なのか、既存サイトの改善なのか、特定のページだけを改善したいのかによって、シナリオの粒度や範囲が変わります。

また、ビジネス側のゴール(問い合わせを月10件増やしたい)とユーザー側のゴール(自分に合った業者を見つけたい)の両方を確認しておくことが重要です。両者のゴールが一致するポイントに、サイトの本質的な価値があります。

Step 2. ペルソナを設定する

主人公となるペルソナを作ります。実際のユーザーへのインタビュー・アンケート・アクセス解析のデータを参考にできるとベストです。データが手元にない場合も、仮説ベースで「こんな人が使いそう」というペルソナを複数描いてみることから始められます。

ペルソナは詳細であるほど良いですが、最低限「誰か・どんな状況か・何に困っているか」の3点は押さえましょう。

Step 3. スタート地点とゴールを確認する

ペルソナがサイトを訪れる起点(検索・SNS・紹介など)と、サイトで達成してほしいゴール(問い合わせ・資料請求など)を定めます。ここを明確にしておくと、シナリオの「範囲」が定まり、行動プロセスを書き出しやすくなります。

Step 4. 行動プロセスを書き出す

スタートからゴールまでの行動を、時系列で具体的に書き出します。このとき、次の3つの観点を並べながら書くとより使いやすいシナリオになります。

  • 行動: ユーザーが実際にとる操作・アクション
  • 思考: その行動の背景にある疑問・期待・不安
  • 感情: そのときユーザーが感じている気持ち

たとえば「トップページを開く(行動)→会社の実績が多いか確認したい(思考)→写真が多くて見やすい印象(感情)→次に料金ページを探す(行動)→料金ページが見つからない(思考)→少し不安になる(感情)→お問い合わせページに飛ぶ(行動)」という形です。

Step 5. 改善ポイントを洗い出す

書き出したプロセスを見ながら、「ここでユーザーが迷っていないか」「ここで離脱しそうではないか」「ここの情報が足りていないのではないか」という観点で課題を拾い上げます。

すべての課題を一度に直す必要はなく、ユーザーへの影響が大きい順番に優先度をつけて取り組んでいけるとよいです。


ユーザーシナリオの具体例

例として、ある税理士事務所のサイトにおけるユーザーシナリオを描いてみます。

ペルソナ: 飲食業を営む40代の個人事業主・山田さん。会計ソフトを自分で使ってきたが、今年から法人化を検討していて、税理士に相談したいと思っている。スマートフォンで調べることが多く、まとまった時間は夜に取れる。

スタート地点: 夜にスマホで「法人化 税理士 相談 初めて」と検索

ゴール: 問い合わせフォームを送信する

プロセス:

  1. 検索結果から事務所のサイトをクリック(「初めての方でも相談しやすい」という見出しに惹かれた)
  2. トップページを開くが、PC向けの表示で文字が小さく読みにくい
  3. 下にスクロールして「サービス内容」を見るが、専門用語が多くてわかりにくい
  4. 「料金はどのくらいかかるんだろう」と気になって料金ページを探す
  5. 料金ページが見当たらないため、問い合わせを一度ためらう
  6. 「まずは相談だけでもいいか」と思い直し、問い合わせページへ
  7. フォームの項目が多く、どこまで書けばいいか不安になる
  8. それでも送信ボタンを押して完了

このシナリオを見ると、「モバイル対応の改善」「専門用語の言い換え」「料金情報の明示」「フォームの簡略化」という4つの課題が浮かび上がってきます。感覚ではなく具体的な行動の流れから課題を見つけられるのが、ユーザーシナリオの強みです。


Web担当者としてユーザーシナリオを活用するヒント

実際の業務でユーザーシナリオを取り入れる際のポイントをいくつかご紹介します。

まず1つのシナリオから始める

最初から完璧なシナリオを作ろうとしなくて大丈夫です。「最も多くアクセスしてくれているユーザー像」に絞って1つのシナリオを書いてみることから始めてみましょう。シンプルなシナリオでも、書き出す過程で多くの気づきが得られます。

定期的に見直す

ユーザーシナリオは一度作って終わりではありません。アクセス解析のデータや問い合わせ内容のフィードバックをもとに、定期的にシナリオを見直していけると理想的です。ユーザーの行動は、季節や社会の変化によっても変わっていきます。

制作会社と一緒に作る

ユーザーシナリオは、Web制作会社との打ち合わせで一緒に作ることもできます。「どんなユーザーに来てほしいか」「そのユーザーにどんな体験をしてほしいか」を会話しながら整理することで、制作会社との認識のズレを減らし、より意図通りのサイトに近づけられます。

当社でも、サイト制作・リニューアルのご相談の際には、ユーザーシナリオをもとにした設計ディスカッションをおこなっています。「何をどう改善すればいいかわからない」という段階からでも、一緒に整理できるとよいかと思います。


まとめ

ユーザーシナリオは、Webサイトを「作る人の視点」ではなく「使う人の視点」で設計・改善するための基本的な手法です。ペルソナ・スタート・ゴール・プロセスの4要素を描くことで、ユーザーの行動と感情を具体的に可視化できます。

特別な専門知識がなくても、紙に書き出すところから始められます。まずは「うちのサイトを使うユーザーは、どんな流れで問い合わせに至るか」を一度描いてみると、改善のヒントが見つかりやすくなるでしょう。

関連用語

  • ペルソナ — ターゲットユーザーを具体的な人物像として定義したもの。ユーザーシナリオの主人公にあたる
  • カスタマージャーニー — 顧客が商品を知ってから購入・継続するまでの行動・心理の流れを地図のように整理したもの
  • UX — ユーザーエクスペリエンスのこと。ユーザーシナリオはUX改善のための分析手法として使われる
  • CV(コンバージョン) — 問い合わせや購入など、サイトの目的アクションのこと。ユーザーシナリオのゴール設定と直結する
  • ファネル — ユーザーが「認知→興味→検討→購買」と絞り込まれていく流れを漏斗に例えたもの

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